
前十字靭帯のボルトを取り外す時ひ感じる独特な「ゴリゴリ感」
半月板の処置がひと段落したあと、いよいよ前十字靭帯のときに埋め込まれていたボルトを外す作業に入ると聞かされました。
先生からは軽い口調で「では、これからボルトを取っていきますね」と声をかけられます。私としては緊張のピークなのですが、手術室の空気は思っていたより和やかで、スタッフの会話の中に笑い声も混ざっていました。
「こっちは必死なんだけどな…」と少しだけ複雑な気持ちになりつつ、それだけありふれた作業なのかな、と自分に言い聞かせていました。
骨の奥から伝わってくるような「ゴリゴリ」という感覚
しばらく横になったまま天井を眺めていると、それまでとは違う独特な感覚が伝わってきました。
麻酔が効いているので痛みはありません。それでも、骨の奥から響くような不思議な違和感だけははっきりと残っています。
体のどこか深いところから、
ゴリゴリ…
ゴリゴリ…
と、削られているような感触と工事現場の揺れるような振動が続きます。
音として聞こえているのか、体の振動として感じているのか、自分でもよく分からないくらいの感覚です。それでも、「今まさに何かを外そうとしているんだろうな」と想像がつくくらい、しっかりと伝わってきました。
「これ、本当に大丈夫なのかな?」と不安になる瞬間
怖くなって、カーテンの隙間から少しだけ様子を覗いてみました。
そこには、ペンチのような器具で膝のあたりをつかみ、何かを引き抜こうとしている先生たちの姿がありました。力の入り方を見る限り、かなりしっかり固定されていたものを外そうとしているのが伝わってきます。
頭の中では、
「そんなに力をかけて大丈夫なのかな?」
「足ごと持っていかれないよね…?」
と、不安とツッコミが入り混じった感情が渦巻いていました。と、言いますか、普通に怖いです。
もちろん実際には、安全を確認しながら淡々と作業が進んでいるのでしょう。それでも、自分の体の中で起きていることだと思うと、どうしても想像が膨らんでしまいます。
「ブチッ」という感触のあとに聞こえた一言

ゴリゴリとした感覚が何度も続いたあと、今までとは少し違う、
ブチッ
という嫌な感触が体の奥から伝わってきました。
一瞬、「今の大丈夫だよね…?違う筋が切れているとかないよね?」と不安がよぎりますが、その直後に先生から
「はい、無事に外れましたよ」
と声をかけられ、ようやく少し肩の力が抜けました。
こちらとしては、かなり時間がかかったように感じましたが、先生たちにとっては予定の範囲内の作業だったのだと思います。
処置が終わっていく安心感と、静かに進むラストスパート
ボルトが外れたあと、先生からは「ここから傷口を閉じていきますね」と説明がありました。
ここまで来ると、ようやくゴールが見えてきたような感覚になります。実際に何をされているのかは見えませんが、「もう少しで終わるんだ」と思えるだけで、気持ちはかなり楽になりました。
少し時間が経ってから、
「これで終わりました。よく頑張りましたね」
と声をかけてもらい、長かった時間がようやく一区切りつきました。私は横になっていただけなのですが、それでもどっと疲れが出てきます。
取り出されたボルトを見て感じたこと
病室に戻る
せっかくなので、「記念として持って帰ります」とお願いしました。後から実物を見てみると、想像していたよりもしっかりしたサイズの金属で、こんなものが自分の骨の中に入っていたのかと思うと不思議な気持ちになります。
それと同時に、「ここまでしないと戻れなかったんだな」と、これまでの道のりの重さもあらためて感じました。
当事者としては寝ているだけでも、心の中はフル稼働
こうして、半月板の再縫合と、前十字靭帯のときに埋め込まれていたボルトの取り外しまで、ひと通りの処置が終わりました。
麻酔のおかげで痛みはありませんが、そのぶん想像力が先に走ってしまい、心の中はずっとフル稼働です。
手術台の上ではほとんど身動きができない分、頭の中だけが忙しく働いていた、そんな時間だったように思います。
このあとの一日は、ほとんどベッドの上で安静に過ごすことになりますが、それはまた次のページで書いていきます。

