
前十字靭帯再建術から「復帰」までの期間はどれくらい?
えすひろです。
前十字靭帯(ACL)の再建術を受けると、いちばん気になるのは「いつスポーツに戻れるのか」「日常生活はいつ普通になるのか」だと思います。私も、手術が決まった瞬間から復帰時期のことばかり考えていました。
先に結論から言うと、スポーツ復帰の目安は「おおむね8か月前後」とされることが多いです。とはいえ、これは一律の正解ではありません。年齢、術式、筋力の戻り、痛みや腫れ、競技特性(切り返しが多いかどうか)などで、現実のスケジュールは前後します。
この記事では、私自身が「いつ何ができるようになったか/何が怖かったか」という一次体験も踏まえつつ、時期ごとの生活の感覚と、リハビリの進み方の目安をまとめます。医療行為の指示ではなく、あくまで「再生ノート(経験ベースの整理)」として読んでください。
復帰スケジュールは「段階」を分けて考えるとラクになる
「復帰」とひとことで言っても、実際には段階があります。私はこれを整理できてから、気持ちがだいぶ落ち着きました。
- 生活復帰:家の中で普通に過ごせる/外出が現実的になる
- 運動復帰(基礎):ジョグ、筋トレ、直線の動きができる
- 競技復帰(個人):シュート、ドリブルなど「対人なし」で競技動作ができる
- 競技復帰(対人):切り返し、接触、反応が必要な本格練習に入る
この記事の「8か月前後」は、主に対人を含む競技復帰の目安です。生活復帰はもっと早く進みますし、逆に競技によってはもっと慎重になることもあります。
退院直後〜数週間:家に帰ってからが本番だった
退院できたとき、私は「よし、これで一段落」と思いかけました。でも現実は逆で、家に帰ってからの生活のほうが危険が多いと感じました。
病院では動線が整っていて、周りも気をつけてくれます。ところが自宅は、健康なときに「何気なくやっていたこと」が、急に難しくなります。
屋外で怖かったもの(退院直後のリアル)
- 長く歩く(痛みよりも、疲労→フォーム崩れが怖い)
- 階段(上り下りの一段が思った以上に負担)
- 少しの段差(歩道の縁石、玄関の上がり框など)
- マンホール・排水溝(足がズレる恐怖)
- 砂利・濡れた地面(滑る、踏ん張れない)
屋内で怖かったもの(「安全なはずの家」が危険に見える)
- フローリング(滑りやすい)
- 立ち座り(イスの高さで負担が全然違う)
- 浴室(濡れて滑る、急に踏ん張れない)
退院直後のリハビリ:やることは地味。でも意味は大きい
この時期は、派手なトレーニングをする段階ではありません。私の感覚では、「動けるようになる」より先に、「悪化させない」ことが最優先でした。
退院後しばらくは、入院中にやっていたメニューの延長で、基本動作を淡々と続けます。私が当時、取り組んでいた内容は以下のような構成でした。
| 内容 | 目安 |
| 膝の曲げ伸ばし | 約10分 |
|---|---|
| 足上げ | 30回 |
| 横向きの足上げ(左右) | 各30回 |
| うつぶせの足上げ | 30回 |
| ハーフスクワット | 30回 |
| 膝を冷やす | 約5分 |
上記を2セット(体調により調整)。私は朝に時間を確保するため、毎朝少し早く起きるようにしていました。早起きが得意ではないタイプですが、「ここでサボると後が伸びる」と思うと、意外と続きました。
退院後〜3か月:いちばん「守る」時期
術後しばらくは、感覚として膝の中が頼りない時期が続きます。私の場合、痛みや腫れだけでなく、歩くときの不安が強かったです。
この時期に意識していたのは、「できること」より「やらないこと」でした。調子が良い日ほど、油断して余計に動いてしまいがちだからです。
特に、周りから「もう大丈夫そうじゃん」と言われたり、自分の気持ちが前に行ったりすると、身体の回復スピードとのズレが出ます。私はこのズレが怖くて、焦りを感じるほど、いったんルールを厳しくしました。
術後3か月前後:走る練習が視野に入ってくる
一般的には、術後の経過が順調であれば、ここから「走ること」を段階的に再開していきます。いきなり距離を走るのではなく、私は“膝に走る動きを思い出させる”感覚が近かったです。
私のイメージ(段階の進め方)
- その場ジョグ:まずは動作を小さく、短く
- 直線ジョグ:曲がり角は歩き、距離も短めに
- カーブを含むジョグ:膝の反応を見ながら少しずつ
ここで重要なのは、気合いではなく「反応を観察すること」だと思っています。痛みや腫れ、張りが出たら、勝ち負けではなく情報として受け止める。私はそのほうが継続できました。
術後5か月前後:フットワークと筋力が本格化してくる
ここから一気に「スポーツっぽい」内容が増えます。ハーキーや反復横跳びのようなフットワーク系は、ケガをしていないときでも普通にキツい種目です。
私はこの時期が、体力的にもメンタル的にもいちばんしんどかったです。理由は単純で、きついのに、結果がすぐ見えないから。
ただ、今振り返ると、この時期は復帰の土台を作る工程でした。派手さはないけれど、ここを抜けない限り、対人復帰は現実になりません。
術後6か月前後:個人練習が「できそう」に見えてくる
6か月を過ぎると、筋力も少しずつ戻り、競技に近い動き(私の場合はバスケットのシュートやドリブル)をやりたくなります。ここで大事なのは、「できる」と「やっていい」は別という感覚です。
この時期に「いける気がする」と思って対人に入ってしまい、再受傷するケースが多いという話は、私は何度も耳にしました。周りが見えないほど焦っているときほど、いったんブレーキを踏む必要があります。

術後8か月前後:対人復帰が視野に入る(ただし“慣らし”が前提)
順調に積み上がっていれば、8か月前後で対人を含む本格練習に近づいていきます。ただ、ここも「解禁=全力」ではありません。
私は復帰直後がいちばん危ないと思っています。身体の強度が戻っても、反応速度・筋持久力・動作の精度が追いついていないことが多いからです。
復帰直後は再受傷のリスクが高いと言われます。最初は無理なプレイを封印し、身体を“競技のテンポ”に慣らす期間を意識したほうが、結果的に長く続けられると感じました。
まとめ:焦るほど「段階」を細かくして、前に進む
前十字靭帯再建術の復帰は、短距離走ではなく長距離走です。焦ったところで回復が早まるわけではなく、むしろ焦りは判断を鈍らせます。
だから私は、焦りが強いときほど、目標を小さく分けました。
- 今日はリハビリを「やる」だけで勝ち
- 痛みや腫れの変化を「記録」できたら勝ち
- できることを増やすより、悪化させないことを優先
復帰までの道のりは長いですが、段階を一つずつ積めば、確実に前に進みます。この記事が、復帰までの全体像をつかむ参考になればうれしいです。
半月板手術の復帰期間については、次の記事にまとめています。
半月板手術後の復帰期間はどれくらい?|縫合・部分切除の違いと私の実体験から解説
それでも、復帰はできます
正直、不安が消えたわけではありません。 膝の違和感も、怖さもあります。
それでも、少しずつ、段階を踏めば、 コートに戻ることはできました。

この瞬間、時間のために、スポーツは違っても、スポーツじゃなくても好きな時間を過ごすために長くつらいリハビリを続けます。目標が叶ったらそれぞれの人生の大きな大きな一歩を踏み出すことができます。これからその壁に立ち向かう人も、先に経験した人たちがたくさんいるんだということを覚えておいてください。そして、先に経験している人の多くがしっかりと目標を達成しています。きっと、あなたもできるはずです。と、前十字靭帯の手術をした先輩の代表として伝えさせていただきます。(偉そうにすみません!)
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