
半月板損傷で「手術か保存か」を迷ったときに知っておきたいこと
半月板を損傷したとき、多くの人が最初に悩むのが「手術をするべきか、それとも保存療法で様子を見るべきか」という選択だと思います。
私自身も、前十字靭帯と半月板のケガを経験し、結果的に半月板だけで3回の手術を受けました。その過程で、保存療法の限界や、手術を選ぶ意味について身をもって感じてきました。
この記事では、
- 半月板損傷における「手術」と「保存療法」の考え方
- 保存療法が行えるとされる4つの条件
- 実際に手術を繰り返した私の体験から見えるリアル
このあたりを整理しながら、「自分はどちらの選択肢が合っているのか」を考える材料になればいいなと思い、まとめてみました。
半月板損傷の治療は基本的に「手術」が軸になる
まず前提として、半月板を損傷したときの治療は、基本的には手術療法が軸になります。
理由はシンプルで、損傷した半月板は、ある程度以上のダメージになると自然には元通りにならないからです。
半月板のまわりには、膝の動きを邪魔しないように血管がほとんど通っていません。そのため、筋肉のように血流でしっかり栄養が届く組織ではなく、自己修復力がかなり弱い部位です。

半月板がどうやって栄養を受け取っているかというと、膝の関節包の中に満たされている関節液から少しずつ栄養を取り込んでいます。ごく軽い損傷であれば、時間の経過とともに落ち着いてくるケースもありますが、裂けてしまったり、大きく欠けてしまった半月板は、関節液だけでは元通りにはなりません。
このため、多くの場合は
- 半月板を残す方向の「縫合」や「一部切除」
- どうしても無理な場合の「部分切除・除去」
といった手術が選択肢に上がってきます。
それでも「保存療法」で復帰している人はいる
では、本当に手術しか選択肢がないのかというと、そうとも言い切れません。
実際のところ、損傷の程度や場所によっては、保存療法でスポーツや日常生活に復帰できている人もいます。プロ・アマ問わず、半月板損傷を抱えながらプレーを続けている選手は少なくありません。
例えば、ニュースなどでも名前が挙がるようなトップアスリートの中には、左膝の外側半月板を損傷しながらも、手術ではなく保存療法とリハビリで復帰しているケースがあります。これは、
- 損傷がごく軽度だった
- 血流がまだ期待できる外側寄りの部分だった
- もともとのフィジカルが非常に強く、周囲の筋力で負担をカバーできた
といった条件が揃っていたからこそ、うまくいった例だと考えられます。
つまり、「治す」という意味では手術が軸になる一方で、「うまく付き合いながらプレーに戻る」という意味では保存療法という選択肢もあり得るということです。
半月板損傷で保存療法が行える4つの条件
ここからは、一般的に保存療法が検討されやすい条件について整理していきます。実際の診断や治療方針は必ず医師が決めるものですが、判断の目安として知っておくと役に立つと思います。
1.損傷の程度が比較的軽い
すでに何度か触れていますが、大きく裂けたり、欠けてしまっている半月板は自然修復がほとんど期待できません。
保存療法が検討されるのは、
- 損傷範囲が比較的小さい
- MRIで見ても大きな断裂までは至っていない
- 日常生活レベルでは、強いロッキングや激しい水腫が出ていない
といった軽度~中等度の損傷であることが多いです。
2.損傷部位が「外側寄り」である
半月板の外側には、わずかですが毛細血管が通っているため、内側と比べると治癒の望みがあるエリアとされています。
一般的には、
- 外側1/3…まだ血流が見込めるゾーン
- 内側へ向かうほど…血流が乏しく自己修復はほぼ期待できないゾーン
といったイメージです。
そのため、半月板の外側1/3付近にある比較的軽い損傷であれば、保存療法で「落ち着かせる」ことができる可能性があります。
3.膝への負担が少ない姿勢・動作を保てること
ここから先は、かなり本人の努力と習慣が影響してきます。
半月板損傷の背景には、
- O脚やX脚など、膝の軌道に偏りがある
- 片足重心のクセが強い
- ジャンプ着地や方向転換のフォームに無理がある
といった姿勢や動作の問題が隠れていることが少なくありません。
保存療法で復帰を目指す場合、
- 立ち方や歩き方を意識して修正する
- 必要に応じてインソールやサポーターを活用する
- 荷重位置を安定させるトレーニングを行う
といった取り組みが欠かせません。
4.半月板を支えられるだけの強い筋力をつけられること
半月板は、いわば膝の「クッション」です。これを守るためには、周りを支える太ももの筋力(特に大腿四頭筋・ハムストリング)がとても重要になります。
保存療法を成功させるうえでは、
- 膝に痛みが出ない範囲でトレーニングを継続する
- 左右差をできるだけ小さくしていく
- スポーツに戻る前に、十分な筋力レベルまで戻す
といった地道な筋力強化が必要です。
損傷の程度が少し重くても、これらの条件とトレーニングがしっかりできれば、実際に競技に復帰している人もいます。

保存療法は「治す」というより“付き合い方を変える”イメージ
ここまで条件を並べてきましたが、実際に自分でケガと向き合ってきて感じるのは、
保存療法は「完全に治す」というより、“膝と付き合い方を変えていく”というイメージに近い
ということです。
痛みが落ち着いても、半月板の状態そのものが元の形に戻っているとは限りません。 「痛くない=治った」「動ける=治った」と思い込んで無理をすると、その先でまた同じ場所を傷めるリスクがあります。
手術か保存かで迷った私の実体験
ここからは、私自身の話を少しだけ書いておきます。
私は半月板の損傷で合計3回の手術を受けました。
- 1回目…縫合で半月板を残す方向
- 2回目…くっつき切らなかった部分の再手術
- 3回目…最終的に部分切除(縫合では耐えられない場所だったため)
今この記事を読まれている方の中には、 「自分も縫合で何とかならないかな」「保存療法で逃げ切れないかな」 と考えている方もいると思います。
私も当時は同じことを考えていましたし、痛みが一時的に落ち着いてくると「このままやっていけるんじゃないか」と思ってしまう瞬間が何度もありました。
ですが、今振り返ると、
- 痛みが減った=良くなった、と判断してしまった
- 「もう大丈夫だろう」と思って負荷をかけすぎた
- 結果として、半月板にとどめを刺してしまい、部分切除に近づいていった
という側面も否定できません。
もちろん、すべてが自分の責任というわけではありませんが、「保存療法でいける」と判断すること自体にも、それなりの覚悟と自己管理が必要だと痛感しています。
保存療法に向いている人・向いていない人
あくまで私の経験と、これまで見てきた人たちを踏まえた印象ですが、保存療法がうまく機能しやすい人・そうでない人には、ある程度の傾向があるように感じています。
保存療法が向いているタイプ
- 損傷が本当に軽度である
- 日常生活や仕事で膝への負荷がそこまで大きくない
- 痛みの変化に敏感で、違和感があればすぐに動きを調整できる
- 毎日コツコツと筋トレやストレッチを継続できる
- O脚・X脚などが軽度で、フォームの修正がしやすい
保存療法が向いていないタイプ
- ジャンプ・ストップ・ターンが多い競技に全力で戻りたい
- 「少し良くなるとつい無理をしてしまう」性格
- O脚・X脚などアライメントの問題が大きい
- 仕事や生活で膝への負担が高い(肉体労働・長時間立ち仕事など)
私はどちらかというと保存療法にはあまり向いていないタイプだったと思います。運動が好きで、限界を試したくなる性格で、痛みが少し引くとどうしても動きたくなる。 結果として、手術に戻るという選択を繰り返すことになりました。
後悔しない選択のために一番大事なこと
ここまで保存療法の条件や手術の話を書いてきましたが、最後に一番お伝えしたいのは、
「どちらを選ぶにしても、今の自分の膝の状態を正しく理解したうえで決めてほしい」
ということです。
そのためには、
- 医師から、損傷の場所・大きさ・状態についてしっかり説明を受ける
- 保存療法と手術療法、それぞれのメリット・デメリットを聞いておく
- トレーナーやリハビリスタッフとも方針をすり合わせる
- 自分の性格や生活スタイルを冷静に振り返る
といったステップが欠かせません。
保存療法が悪いわけでも、手術がすべてを解決してくれるわけでもありません。 大事なのは、
「自分の膝」と「これからの生活・スポーツへの希望」に合った現実的な選択をすること
だと、私は3度の手術を通して強く感じています。
この記事が、少しでもその判断の手助けになれば嬉しいです。実際の治療方針については、必ず主治医や専門職と相談しながら、納得のいく選択をしていってください。
