
退院した瞬間から始まる「外出の怖さ」
前十字靭帯(ACL)の手術を終えて、ようやく退院。
病院という“守られた環境”から出られることはうれしい反面、退院したその日から現実が始まります。
私が一番強く感じたのは、痛みそのものよりも「外に出ることが怖い」という感覚でした。
入院中は、ベッド周辺の動線が整っています。床は段差が少なく、滑りにくく、何かあればすぐナースコールが押せます。
しかし退院した途端、歩く場所は自宅だけではなくなります。通勤、通学、買い物、駅の階段、信号待ち、人混み。
「歩けるようになってきた」と思っていても、外は想像以上にハードモードです。
特に退院直後は、膝がまだ落ち着いていません。
“歩ける”と“安全に歩ける”は別物で、そこを取り違えると精神的にも身体的にも一気にしんどくなります。
退院後に誰もが抱える「歩くこと」への不安
退院後の生活は人それぞれですが、不安の中心にあるのはだいたい同じです。
それが「立って歩かなければいけない」こと。
例えば、こんな不安が頭の中をぐるぐる回ります。
- 本当に会社(学校)にたどり着けるのか
- この足で電車に乗っても大丈夫なのか
- 人にぶつかられたらどうなるのか
- 雨の日や風の日、足元を滑らせないか
- 車を運転できるのか(運転して良いのか)
この不安は、外から見ると大げさに見えるかもしれません。
でも、術後の本人にとっては現実です。
なぜなら、膝は「まだ回復途中」であり、しかも日常生活では不意打ちの衝撃が起こりやすいからです。
この記事では「怖がってください」と脅したいのではなく、
退院後の外出に潜むリスクと、現実的な対策を、私の体験ベースで整理します。
結果的に、怖さを想定しておく方が、変に焦らず落ち着いて行動できると思います。
外の世界は「段差」「人」「揺れ」でできている
自宅の中でも注意点は多いですが、外に出ると危険度は一段上がります。
外は、こちらの都合で動きが止まってくれません。むしろ逆で、こちらが合わせる必要があります。
電車・バスは「揺れ」と「人の動き」が最大リスク
電車やバスの怖さは、転ぶことだけではありません。
揺れた瞬間に反射的に踏ん張れないことが問題です。
術後は、踏ん張る動作そのものが怖い上に、移植した筋も弱く、思った通りに体が動きません。
私が意識していたのは、次のような点です。
- 可能ならラッシュ時間を避ける(1本早い/遅いだけでも違う)
- 座れるなら必ず座る(周囲に遠慮しない)
- 立つ場合は「急停止・急発進」を想定して手すりを確保する
- ホームや階段では無理に流れに乗らず、端に寄って行動する
「席を譲ってもらうのが申し訳ない」と思う人もいるかもしれません。
でも、術後は“優しさを受け取るのも回復の一部”です。
無理をして転びそうになったり、痛みが強くなったりする方が、結果的に周囲にも迷惑がかかります。
階段・段差・歩道の傾きは「じわじわ効く」
地味だけど確実に負担になるのが、段差や階段、歩道の傾きです。
術後は歩き方が微妙に変わるので、いつもなら気にならない程度の傾きでも、膝が不安定に感じます。
私が退院後しばらく「外って危ないな」と思ったのは、
大きな事故が起きたからではなく、小さなヒヤリが何度も起きたからです。
- 段差の見落とし
- マンホールや点字ブロックの滑り
- 歩道の傾斜で患側に体重が乗る感覚
- 横断歩道の急ぎ足
こういう「小さな危険」の積み重ねが、疲労と痛みにつながっていきます。
車の運転は「できる/できない」ではなく「リスクをどう見るか」
退院後、車の運転をどうするかは人によって事情が違います。
ただ私が強く思ったのは、運転中の操作そのものよりも、万が一に巻き込まれた時のダメージです。
普段なら軽い衝撃で済む場面でも、術後しばらくは患部が弱っています。
急ブレーキ、追突、ちょっとした接触。
そういう“もしも”が起きた時、痛みや悪化につながる可能性が上がります。
私の場合は、可能な範囲で運転を避けました。
もし避けられない場合でも、距離を短くする、混雑時間を避けるなど、リスクを下げる方向で考えるのが現実的だと思います。
外出で一番きついのは「帰宅後〜夕方」にやってくる
ここが、退院後に意外と見落としがちなポイントです。
「外で転ばないように気を付ける」ことばかりに意識が向きますが、
私がしんどかったのは、むしろ夕方〜帰宅後のむくみと鈍い痛みでした。
外で大きな衝撃を受けたわけではなく、
椅子に座って過ごしていただけの日でも、夕方になると足が重くなります。
帰宅時には、膝下から太ももの中腹あたりまで「パンパン」になって、
触ると熱っぽい。何かが溜まっているような感覚がありました。
この状態になると、気持ちも落ちます。
「ちゃんと歩けてたのに、なんでこんなに痛いんだろう」
「今日は無理してないのに…」
そう思うほど、不安が増えてしまいます。
でも、退院直後はこういう“波”が起きやすい時期でした。
だからこそ、帰宅後のケアをルーティン化した方が、精神的にも安定しました。
私がやっていた「帰宅後のケア」:まずは足を休ませる
帰宅して足がパンパンになった日は、とにかくやることを減らしました。
頑張って家事を片付けるよりも、先に膝を落ち着かせる方が結果的に楽でした。
1)横になって足を上げる
まずは横になり、足を少し高い位置に置きます。
これだけでも、だんだん楽になる感覚がありました。
「溜まっている感じ」が少しずつ引いていくようなイメージです。
2)患足が熱っぽい日は冷やす
触ってみると、患足が熱を持っています。
その時は、氷嚢などで膝周辺を冷やすと落ち着きました。
(どこまで冷やすか・どの程度かは人によるので、私は無理のない範囲でやっていました)
「歩けるようになってきた」時期ほど油断しやすいです。
痛みが小さくなってきた分、行動量が増え、結果としてむくみが強くなります。
だからこそ、ケアをセットにしておくと、翌日が全然違いました。

むくみが強い期間は「ずっと続くわけではない」
退院後のむくみは、いつ終わるのかが見えないと辛いです。
私も当時、「このパンパンはいつまで続くんだろう」と思っていました。
体感としては、術後しばらくの間はむくみが出やすく、
時間が経つにつれて少しずつ落ち着いていきました。
ただ、落ち着くまでは“日々の波”があるので、良い日と悪い日が混ざる感じです。
重要なのは、むくみや痛みが出た時に「失敗した」と思いすぎないこと。
無理をした自覚がなくても、外出はそれだけで負荷がかかります。
だから、むくみが出た日は「今日はそういう日」と割り切って、ケアに切り替える方が回復は進みやすいと感じました。
退院後の外出で、私が「本当にやめた方がいい」と思ったこと
ここはあくまで私の実感ですが、退院直後に「これは危ない」と感じた行動をまとめます。
やらないと生活が回らない人もいると思うので、できる範囲で“回避”や“代替”を検討するイメージです。
- 混雑した電車で立ち続ける(揺れ+人の圧がきつい)
- 急いで階段を下りる(焦りがミスに直結する)
- 雨の日に外出する(滑る要素が一気に増える)
- 買い物で荷物を持ちすぎる(バランスが崩れやすい)
- 「今日は行けそう」で予定を詰め込む(翌日の反動が大きい)
術後の回復は、勢いで進むというより、事故らないように積み上げるものだと感じました。
焦りが強いほど、無理をしてしまいがちなので、先に注意点を知っておく方が安全です。
まとめ:外出は「怖い」くらいでちょうどいい
退院後の外出は、思っている以上に神経を使います。
でも、その怖さは悪いものではありません。
怖いからこそ慎重になるし、慎重だからこそ大きなトラブルを避けられます。
- 退院後に一番不安なのは「歩くこと」
- 外は、揺れ・人混み・段差など“不意打ち”が多い
- 大きな事故がなくても、夕方にむくみと鈍痛が出やすい
- 帰宅後のケア(休む・足を上げる・必要なら冷やす)をルーティン化すると楽
- 怖さを否定せず、リスクを下げる行動に変えるのが現実的
私は退院してしばらく、「普通の生活」に戻れたようで戻れていない感覚がありました。
でも、少しずつ外出に慣れていく中で、怖さの正体が分かってきて、徐々に落ち着いていきました。
これから退院を迎える人、退院したばかりで不安が強い人にとって、
このページが「外出の現実」をイメージする材料になればうれしいです。
