2回目の半月板手術で再縫合を選んだ日。モニター越しに自分の膝の中を見た
半月板の再縫合手術が始まり、モニターには膝の内部が映し出されている場面を描いたイラスト。

モニター越しに見る、2回目の半月板手術

下半身の感覚がすっかりなくなり、手術台の上で静かに横になりながら「今、いったい何をされているんだろう」と考えていました。上半身にはときどき揺れが伝わってきますが、実際にどんな作業をしているのかまではわかりません。

たぶん足を切り始めたあたりからカーテンがかけられ、少し首を起こしてカーテンの向こうをのぞこうとしても、肝心なところは見えないようになっています。感覚は全くなく、たまに上半身まで伝わってくる衝撃で何かをしているんだなと感じるくらいです。もちろん、足を動かそうにも全く動かし方がわからなくなっています。なんとも不思議な気持ちですね。
視線を横に向けると、頭の横にあるモニターがふと目に入りました。

新しく傷ついた半月板と、前回の縫合部分

しばらくすると、先生がモニターをこちらに向けてくれてくれました。画面に映っていたのは、洞窟の中のような不思議な景色。先生が「これが膝の中です。と話してくれてなんとも言えない感覚になりました。水の中をゆらゆらと何かが動いていて、「膝って、こんなふうに見えるんだ」と半分他人事のように眺めていました。続けて先生は落ち着いた声で説明を始めました。

右ひざの処置中、モニター越しに自分の足の内部が映し出されていた場面。妙な緊張感と不思議な感覚が重なった時間でした。

まず見せてもらったのは、今回新しく傷ついた半月板の部分です。半月板の一部がめくれ上がるように浮いていて、細い切れ端がふわふわと揺れています。「これがロッキングの原因」と説明をうけ、映像なのに妙にリアルに感じました。

このめくれている部分は少し削って成形すれば問題ないそうで、簡単に終わるそうです。

続いて映し出されたのは、以前の手術で縫合してもらった場所です。本来は糸でしっかり固定されているはずのところが、また裂けていました。ところどころに糸らしきものが見えますが、役目を果たせずに埋もれてしまっているように見えます。

先生からは「再縫合すれば治る可能性はあるけれど、時間がたっているので成功するかどうかは五分五分くらい」と説明がありました。その言葉を聞いた瞬間、頭の中でいろいろな考えが巡りましたが、答えは最初から決まっていました。

私は小さく息を吸い込んで、「再縫合をお願いします」と伝えました。あらためて口にすると、2回目の手術に臨んでいる現実がずっしりとのしかかってきます。

めくれた半月板を整える作業

まずは新しくめくれてしまった半月板の処理から始まりました。モニターの中には、金属の器具がにゅっと現れて、めくれた部分を少しずつ削っていきます。太いミミズのような、不思議な見た目の器具です。

映像で見る限りはかなり大胆に削っているように見えるのですが、先生の声は落ち着いていて、「ここは短時間できれいになりますからね」と淡々と進んでいきます。気づけば、さっきまでふわふわしていた半月板の欠片はすっかり姿を消し、輪郭もだいぶ整っていました。

モニターの向こうで行われているのは自分の膝の手術なのに、痛みも感覚もまったくありません。体験している本人なのに、どこか第三者目線で眺めているような不思議な時間でした。

地道に続く再縫合と、ゆるむ意識

続いて、本命である半月板の再縫合に入ります。ここからは先生とスタッフの会話のトーンも少し変わり、集中した空気が手術室全体に広がりました。

糸をかけて、位置を確認して、また微調整して…。そんな細かい工程が、モニター越しにも伝わってきます。最初のうちは「今はここを縫っているのかな」などと想像しながら眺めていましたが、時間が経つにつれてだんだんとまぶたが重くなってきました。

腰椎麻酔で意識はあるはずなのに、体はリラックスしていて、ところどころ記憶が途切れかけます。完全に眠ってしまうわけではないのですが、「あれ、今少し落ちてたかも」と思う瞬間を何度か繰り返していました。

ふと気づくと、先生の声が再びはっきりと聞こえてきます。「半月板のほうは、もう少しで終わりますよ」。その言葉を聞いたとき、ようやくひと山越えたような安堵感がじわっと湧きました。

一息ついたところで、思い出した「ボルト」の存在

「これでひとまず半月板の手術は終わりですね」と心の中でほっとしたのも束の間、先生から次のひと言が飛んできます。

「では、このあと前十字靭帯のボルトも抜いていきますね」

その瞬間、頭の中で忘れていた予定が一気によみがえりました。そう、今回は半月板の再縫合だけでなく、前十字靭帯の手術で埋め込んだボルトの抜去も同時に行うことになっていたのです。

半月板のことで頭がいっぱいになっていましたが、まだもうひと仕事残っていました。「そういえば、ボルトも抜くんだった…」と、完全に忘れていました。

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