前十字靭帯・半月板損傷で筋力はどれくらい落ちる?計測結果でわかった現実
前十字靭帯・半月板損傷後の回復過程で行われる、リハビリ室での筋力測定のイメージ

前十字靭帯・半月板を損傷すると筋力は想像以上に落ちる

半月板や前十字靭帯(ACL)を損傷したとき、痛みや腫れに目が向きがちですが、回復を左右するもう1つの要素があります。
それが「筋力の低下」です。

よく「太ももの筋力が15%〜50%落ちる」と言われます。最初にこの話を聞いたとき、私は正直こう思いました。
「いや、そこまで落ちる? 多少は落ちるだろうけど、そこまでではないはず」
しかし、実際に計測してみると、体感と現実が一致していないことを突きつけられました。

このページでは、私自身がリハビリ期に体験した「筋力計測」と、その結果から感じたことをまとめます。
医療的な断定をする意図はなく、あくまで当事者としての実感を中心に書きます。
ただ、これから復帰を目指す人にとって「筋力の現実」をイメージする材料になればと思います。

筋力が落ちる理由は「サボったから」ではない

筋力低下というと「運動できない期間が長かったから」と単純に考えがちです。もちろんそれもあります。
ただ、私が感じたのは、筋力低下は気合いの問題ではありません。

まず、手術したときは筋肉が萎縮して小さくなります。これは避けられません。さらに、ケガをした直後や手術直後は、痛み・腫れ・可動域制限などが重なって、思った通りに足が動きません。
日常生活ですら、無意識に患側をかばいます。階段、段差、床の滑り、立ち座り、浴室……。
「ちょっとした動き」が全部リスクに見えてくるので、身体は自然とブレーキをかけます。

その結果、太もも周り(特に膝を支える筋群)を十分に使えない期間が続き、筋肉は落ちていきます。
私はリハビリをかなり頑張ったつもりでしたが、それでも落ちた分を取り戻すには時間が必要でした。

関連ページ:前十字靭帯再建術後の痛みはどれくらい?術後1週間のリアルな痛みとリハビリ体験談
「痛みがある中でどうやって動かしていったか」は別ページで詳しく書いています。

筋力を「見える化」すると現実がわかる

回復期の怖いところは、「歩ける=戻った」と錯覚してしまう点です。
歩けるようになったり、軽くジョグができたりすると、気持ちは一気に前に進みます。
でも筋力は、見た目や感覚よりも遅れて戻ることがあります。

そこで役に立ったのが筋力の計測でした。
自分の状態が数字として出ると、「今はどの段階なのか」が冷静に把握できます。
精神的にも、変な焦りが減りました。逆に「まだ差がある」と突きつけられると慎重にもなれます。

私は計測をして、良い意味で現実に引き戻されました。
復帰は勢いではなく、積み上げの延長にある。そう思えるようになりました。

私の計測結果(5か月後/8か月後)

ここからは、私が実際に計測したときの話です。
当時の評価表のうち、特に注目されることが多い「最大トルク」という項目を中心に見ていきます。
(画像は当時の計測結果です。紙の見方がわかりづらいので、必要な部分だけ抜き出して説明します)

手術から約5か月後:欠損は約19%程度

最初の計測は、前十字靭帯再建術から約5か月後でした。
自分としては「かなり筋トレを頑張っている」「戻ってきている感覚がある」時期です。

前十字靭帯再建術後に行ったアイソキネティック筋力測定の結果用紙。健側と患側の太ももの筋力差が数値とグラフで示されている
前十字靭帯再建術から約5か月後に実施したアイソキネティック筋力測定の結果。患側は健側に比べて約20%の筋力低下が見られた。

評価表の左上あたりにある「最大トルク」の数字を見ると、健側(ケガしていない足)と患側(手術した足)で差が出ていました。
この時点で、左右差は約2割弱。つまり、体感よりもまだ差が残っていた、ということになります。

このときの私は「ここまでやったのに、まだ差があるのか」と少し悔しかったです。
ただ同時に「やっぱり筋力はそんな簡単には戻らない」という納得もありました。

手術から約8か月後:欠損は約11%程度まで改善

次の計測は、手術から約8か月後です。
この時期になると、リハビリの強度も上がり、動ける幅も増えてきます。
気持ちとしては「もういけるんじゃないか」と思いやすい時期でもあります。

前十字靭帯再建術後8か月時点で行ったアイソキネティック筋力測定の結果用紙。健側と患側の筋力差が数値とグラフで示されている
術後約8か月の筋力計測結果。最大トルクの左右差が前回より縮まっています。

結果としては、欠損が約11%程度まで改善していました。
まだ理想(10%未満)には届かないものの、確実に差が縮まっていました。

私はこの数字を見て、かなり救われました。
「やってきたことは無駄じゃなかった」「時間をかければ戻る」
そう思えたのが大きかったです。

一方で、回復してきた分だけ怖さもありました。
動けるようになったタイミングほど、無理をしてしまいがちです。
ここで焦ってしまうと、再受傷という最悪のルートに入ってしまう可能性がある。
その感覚が、数字を見たことでよりリアルになりました。

アイソキネティック計測は何をしているのか

私が使った計測機器は、いわゆる「アイソキネティック」と呼ばれるタイプのものでした。
簡単に言うと、足を曲げ伸ばしする動作を、一定のスピードに制御しながら計測する装置です。

座った状態で体をしっかり固定して、まずは健側から計測します。
その後に患側を計測します。
力いっぱい伸ばしたり曲げたりしているのに、機械が速度を一定に抑えてくれるので、動作としては独特です。
私はこの感覚がけっこう苦手で、終わった後は普通に疲労感が残りました。

私の場合は、60回転相当の設定(低速)と、120回転相当の設定(高速)で計測しました。
評価表には「60DEG/SEC」などの表記があり、一般に低速側が重要視されやすいと言われます(私はその説明を受けました)。

評価表の見方(最低限ここだけ)

評価表は、用語が難しくて最初は戸惑います。
ただ、最低限「どこを見るか」を押さえておくと、理解しやすくなります。

最大トルク 動作中に出せた筋力のピーク値。まず最初に見ることが多い指標。
最大トルク / 体重 体重で補正した値。体格差がある人同士でもイメージしやすくするための項目。
最大仕事量 可動域全体でどれだけ力を出せたか、の目安。
平均パワー 力を出す「速さ」も含めた目安。スポーツ復帰を考えると気になる項目。
主働筋 / 拮抗筋 対比 筋肉のバランス。極端な偏りはトラブルの要因になり得ると言われる。

そして、多くの人が一番気にするのが「欠損(左右差)」です。
あくまで私が見た資料ベースですが、だいたいの目安は次のような区分になっていました。

欠損(左右差) 目安 意味合い(ざっくり)
1〜10% 差が小さい 左右の差は比較的小さい状態
11〜25% 差が残る 筋力バランス改善のため、継続的なリハビリが推奨されることがある
25%以上 差が大きい 機能面での課題が出やすく、慎重な判断が必要になりやすい

この「数字」を見るだけでも、復帰に対する判断が変わることがあります。
歩ける、走れる、ジャンプできる――。その感覚と、筋力の数字がズレているときほど注意が必要だと私は感じました。

結論:筋力は戻る。ただし、焦ると危ない

ここまで読んでいただいて伝えたいことです。

  • 半月板や前十字靭帯を損傷すると、筋力は思っている以上に落ちる
  • 体感だけでは判断しづらいので、計測で「見える化」すると冷静になれる
  • リハビリを続ければ改善していく。ただし、動けるようになった時期ほど油断しやすい

私は筋トレが好きなタイプではありません。むしろ飽きっぽいです。
それでも、人生の中で一番「地味な積み上げ」をした時期がこのリハビリでした。
その積み上げが、数字として改善に出たときは、ちゃんと報われた気がしました。

もし筋力計測をする機会があれば、ぜひ「結果の紙」を受け取って保管しておくことをおすすめします。
後から見返すと、回復のプロセスが客観的に見えて、意外と励みになります。

そして最後に。
復帰を急ぎたくなる気持ちは、当事者ほど強いです。私もそうでした。
ただ、焦って動きすぎた先にあるのは、達成感ではなく「やり直し」かもしれない。
そう考えるようになってから、私は少しずつペースを守れるようになりました。

このページが、いま不安を抱えている人にとって、少しでも現実的な目安になればうれしいです。


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