
退院翌朝、ふくらはぎの違和感が一気に強くなった
退院してから1日たった朝、まず最初に気になったのは膝ではなく、ふくらはぎの上の方でした。
痛いというより、まずは「重い」。ずっと誰かにダンベルでも乗せられているような、ズンズンとした重さが続いている感覚です。
ふくらはぎの中で血がたまってしまっているんじゃないか…と、ちょっと嫌な想像をしてしまうくらいの違和感でした。
家事だけでもふくらはぎがパンパンになる
とはいえ、前日に「明日やろう」と後回しにしたことは、誰も代わりにやってくれません。
入院中にたまった洗濯物、一週間家を空けているあいだに積もったほこりの掃除、最低限の片づけ…。動きたくはないけれど、やらなければどんどん居心地が悪くなります。
杖をつきながら、家の中をゆっくり足を引きずって家事をこなしていきました。包帯の交換もしなければいけないので、横になってばかりもいられません。
ひと通り終わったころには、ふくらはぎの上のあたりがパンパンに張っているような感覚でした。
コンビニまで3分の道が、まさかの30分コースに
家事が終わるころには、お昼に近い時間になっていました。冷蔵庫の中もさみしくなってきたので、最低限の食料とアイコスを買い足すために、意を決して外へ出ることにしました。
近所のコンビニまでは、普段なら歩いて3分ほどの距離です。本来なら自転車でサッと行ってしまうような場所ですが、まだ膝が痛く、万が一転んだら大変なので徒歩でいきます。
杖をつきながら、いつもの何倍もゆっくりしたスピードで歩き始めました。足元に集中してつまずかないように、同時にふくらはぎに余計な衝撃が伝わらないように、恐る恐る一歩ずつ進んでいきます。
立っているだけで、だんだんとふくらはぎのあたりに血がたまっていくような嫌な感覚がありますが、この時点ではまだ「我慢すれば何とかなる」レベルでした。
油断して立ち読みをした瞬間に、ふくらはぎが悲鳴を上げる
コンビニに着いて、必要なものをカゴに入れたところまでは順調でした。本来ならそこでさっさとレジに向かえばよかったのですが、平日休みの誘惑には勝てず、つい雑誌コーナーで立ち読みを始めてしまいました。
その数分後です。
ズン、ズン、ズン…と、自分の鼓動に合わせるように、ふくらはぎの奥から重さが増していく感覚が強くなっていきます。
「これはまずいな」と思ったときにはもう遅く、鈍い重さが表面の「ビキッ」「ピキーン」という鋭い痛みに変わっていました。
立ち読みどころではなくなり、慌てて雑誌を戻してレジへ。必要最小限の買い物だけ済ませて、急いで店を出ます。
途中で何度も立ち止まり、声をかけられるほどの痛み
問題はここからでした。杖をついて歩き始めると、ふくらはぎの痛みはみるみるうちにグレードアップしていきます。
何歩か進むごとに、足の中で「ビキ!」「ピキーン!!」と電気が走ったような痛みが出て、その場で足が止まってしまいます。
座りたくても、ここは道の途中。腰を下ろせる場所もないので、杖を支えにしながら、うめき声をこらえるのに必死です。
幸い人通りの少ない道だったのですが、それでも一人の方に声をかけられました。
「大丈夫ですか? 」
ハーフパンツから見えるのは、包帯でぐるぐる巻きにされた足。どこが痛いかは一目瞭然だったと思います。
本当は全然大丈夫ではないのですが、「だ、だいじょうぶです…」と返すのが精一杯でした。
しばらくじっとしていると痛みが少しだけ引く瞬間が来るので、そのタイミングで数歩だけ進む。また痛みで止まる…それを何度も繰り返して、ようやく家までたどり着きました。
コンビニから自宅までの所要時間、約30分。普段の10倍です。今となっては笑い話ですがさすがにこのときばかりは笑う余裕はありませんでした。
足を上げると少し楽になるけれど、不安だけが残る
家に着くなり、荷物を置いてすぐに横になります。枕やクッションを重ねて足を高く上げると、少しずつビキビキした痛みが和らいできました。
「とりあえず歩かなくていい状態なら、なんとかやり過ごせる」――そう感じた一方で、頭の中は不安だらけです。
前に受けた膝の大きなケガのときには、こんな種類の痛みはなかったからです。何か別の問題が起きているのではないか、という考えがどうしても頭をよぎります。
ネットで原因を探してみたけれど、結局よくわからない
横になって少し落ち着いてから、スマホで似たような症状がないかを検索してみました。
調べている中で目についたのは、「神経が刺激されて起こる痛み」に関する情報です。症状の表現だけ読むと、ふくらはぎのビキビキした感じと近い部分もあるように思えました。
ただ、実際には痛む場所の範囲や、原因となる生活習慣などが自分とは少し違っているようにも感じます。
読めば読むほど「それっぽいけれど、決定打には欠ける」という状態で、はっきりとした答えにはたどり着けませんでした。
とりあえず神経の痛みだなとはわかるものの、素人の自己判断では限界がありますし、かえって不安が大きくなるだけです。
この日は、ひたすら「足を上げてじっとする」一日
結局この日は、冷やしながら足を高く上げてじっとする、という姿勢でほとんどの時間を過ごしました。歩くたびにあの痛みが襲ってくると思うと、動く気にはなれません。
「とりあえず今日は無理をしない」「どうしても不安が続くようなら、ちゃんと専門の先生に診てもらおう」――そう決めて、この日は静かに一日を終えることにしました。
