
私はバスケットボールのプレー中に前十字靭帯(ACL)を損傷しました。
診察や手術の説明を受けるなかで、「そもそも前十字靭帯って何をしているのか」「切れると膝の中で何が起きているのか」を必死に調べました。
ここでは、医者目線の専門解説ではなく、「実際にケガをした一人の当事者として理解したこと」を中心に、できるだけわかりやすくまとめてみます。
※この記事は私の実体験と、当時医師から受けた説明・一般的に言われていることを整理したものであり、診断や治療を決めつけるものではありません。実際の判断は必ず主治医と相談してください。
前十字靭帯(ACL)はどんな役割をしているのか
前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)をつないでいる靭帯です。
- 脛骨が前方向に出すぎるのをブレーキしてくれる
- 膝がねじれる動き(ひねり)を抑えてくれる
ざっくり言うと、「膝が前にガクッといきすぎないように支えてくれている、膝の中心の大事なロープ」のようなイメージです。
膝の中には、前十字靭帯とセットでよく名前が出てくる後十字靭帯(PCL)もあります。
- 前十字靭帯(ACL):脛骨が前に出すぎるのを防ぐ
- 後十字靭帯(PCL):脛骨が後ろにずれるのを防ぐ
この2本が膝の中でクロスするように走っているので、「十字靭帯」と呼ばれています。
前十字靭帯を損傷しやすいタイミング
普通の生活をしているだけなら、前十字靭帯を損傷することはほとんどありません。私の周りでも、スポーツをしているときに受傷した人ばかりです。
多いと言われるスポーツ
急なストップ&スタートや、ジャンプ・着地・切り返しが多いスポーツで起こりやすいと言われています。
- バスケットボール
- サッカー
- バレーボール
- スキー
- ラグビー など
私が受傷したときの状況

私はバスケットボールの試合中、ジャンプの着地で受傷しました。
着地の瞬間、膝が内側に入るような形になってしまい、そのタイミングで膝に変な力がかかった感覚がありました。
- 人と少しもつれた着地だった
- 身体も力んでいて、膝の向きと力の方向がちぐはぐだった
まさに「やってしまった」とわかるような瞬間でした。
後ろからのタックルなどでも起こる
スポーツによっては、後ろからタックルされたときに膝へ強い力がかかり、前十字靭帯を損傷してしまうケースも多いようです。
女性に多いと言われている理由
統計的には、前十字靭帯の損傷は女性の方が多いと言われています。
筋力バランスや骨格の違い、ホルモンの影響など、いろいろな要因が考えられているようですが、「これが決定的な原因」というものは、私が調べた範囲でははっきりとはわかっていませんでした。
前十字靭帯が断裂・損傷するとどうなるのか
前十字靭帯は、脛骨が前に出すぎないようにブレーキをかけてくれる存在です。
ここが切れたり大きく損傷したりすると、脛骨が前にずれやすい膝になり、膝全体のバランスが崩れます。
他の部分への影響
膝のバランスが崩れることで、他の靭帯や半月板にも負担がかかります。
- 半月板の損傷を併発しやすくなる
- 内側側副靭帯など、周りの靭帯にも負担がかかる
実際に私も、前十字靭帯だけでなく半月板も損傷していました。
受傷してすぐに起こったこと(私のケース)
「バチン」という音について
本やネットでは「バチンという音がする」とよく書かれていますが、私の場合は音に気づきませんでした。
(試合中で周りも騒がしく、単に聞こえていなかっただけかもしれません。)
着地直後の感覚
- 着地した瞬間、膝に力が入らなくなった
- かなり強い痛みを感じた
しばらくは立ち上がれないような痛みでしたが、数十分すると「なんとか歩ける」くらいには落ち着いてきました。
アドレナリンが出ているときの怖さ
試合中など、興奮してアドレナリンが出ているときは、痛みが少しおさまると「また動けるかも」と錯覚してしまいます。
私も、
- 少し時間がたつと足に力が入るように感じた
- 軽くなら走れそうだと錯覚した
という状態でしたが、今振り返るととても危険だったと思います。
前十字靭帯の損傷が疑われるときは、絶対に無理してプレーを続けない方がいいと、実体験から強く感じています。
時間が経ってから出てくる不安感
腫れが引いても「元通り」ではない
受傷からしばらくすると、腫れがゆっくり引いてきます。
私の場合も、1週間くらいで普通に歩けるレベルには戻りました。
ただし、それで「完全に元通り」かというと、まったくそんなことはありませんでした。
膝崩れ(ガクッと力が抜ける感じ)
前十字靭帯が切れていると、脛骨が前に出すぎるため、歩いている最中や、ふとした瞬間に膝がガクッと崩れるような感覚(膝崩れ)が出ることがあります。
私の場合は、
- 歩いているときの不安感はそこまで強くなかった
- 自転車をこいでいるときに足を踏み外すような感覚が多かった
という感じでした。
「なんとなく膝が信用できない」「自分の膝だけ別のものになったみたい」な違和感は、かなり長く続きました。
「断裂」と「損傷」の違いについて(私の理解)
言葉としては、
- 断裂:完全に切れてしまっているイメージ
- 損傷:切れかかっている・部分的に傷んでいるイメージ
と説明されることが多いと思います。
ただ、私が医師から受けた説明や、自分で調べた範囲では、
- どちらの場合も、前十字靭帯として正常に働かなくなっている
- 「少しだけ伸びて緩んでしまった」状態が元通りピンと張った靭帯に戻ることは期待しにくい
という点では共通していました。
そのため、「断裂だからこんな治療」「損傷だから全然別の治療」というよりは、
「どのくらい不安定か」「どのくらいの強度を必要としているか(競技レベルなど)」を踏まえて、手術か保存療法かを決めていくイメージに近いと、私は理解しています。
私から伝えたいこと
- 前十字靭帯は、膝の安定にとって想像以上に大事なパーツ
- 一度大きく損傷すると、膝の「安心感」がガラッと変わる
- 受傷直後に無理をすると、半月板など他の部分も巻き込んで悪化しやすい
もしあなたが今、「もしかして前十字靭帯をケガしたかも?」と感じているなら、
- 自己判断で動き続けない
- できるだけ早く整形外科を受診する
この2つだけは、私の経験からも強くおすすめしたいです。
次の記事では、前十字靭帯や半月板とセットで名前が出てくる「半月板」について、同じく実体験をベースにお話ししていきます。
(※この記事は、私の当時の受傷経験と、そのときに聞いた説明・調べた内容を、できるだけわかりやすく整理し直したものです。最新の医学的な内容と異なる可能性もありますので、具体的な治療方針は必ず主治医と相談してください。)

