
前十字靭帯再建術後、服装が想像以上にストレスになる
前十字靭帯(ACL)の再建手術をすると、退院してしばらくの間、膝に装具(ブレース)を付けて生活することになります。
これが、思っている以上に日常生活を制限します。
手術の痛みやリハビリの大変さは、ある程度覚悟していました。
でも、私が予想できていなかったのが「服装が決まらない」という地味なストレスでした。
入院中は病院の中だけで完結します。ハーフパンツや病衣で過ごす時間が多く、装具が見えていても誰も気にしません。
ところが退院した瞬間から、生活が一気に「外の世界」になります。
- コンビニに行く
- 通院する
- 役所や銀行に行く
- 仕事に戻る(私の場合はスーツ)
この「たったそれだけ」の用事でも、装具があることで服装の選択肢が激減します。
そして一番つらいのは、服装が決まらないこと自体よりも、「装具があることで、外出が面倒になる」ことでした。
外に出るたびに、服の選び直し・装具の調整・足の違和感に気を使う。
これが積み重なると、外出が億劫になります。
退院後はリハビリが本格化する時期でもあり、生活そのものが“回復を優先した設計”になります。
なので私は、「おしゃれは後回し」「ラクに安全に動けることを最優先」に割り切った方が精神的に楽でした。
なぜ装具があると服装が不便なのか
装具が不便な理由は、単に「大きいから」「目立つから」だけではありません。
実際に生活すると、複数の要因が絡んできます。
脱ぎ着がやたら面倒になる
装具は膝周りにしっかり巻き付けて固定します。
外出先で少し調整したいと思っても、服の下に装具があると、簡単には触れません。
- ズレた
- 締め付けが気になる
- 皮膚が擦れて痛い
- 汗で蒸れてかゆい
こういう「地味な不快感」が出たときに、服の下に装具があると対処できません。
トイレなどで座って、ズボンをまくって、ベルトを緩めて、調整して……という工程が必要になります。
この工程が外出中に何度も発生するのが、想像以上にストレスでした。

歩くほどに腫れや違和感が出る
素材が硬くて、クッションはあっても限界があります。
ちょっと歩いただけでも、膝周りの腫れや圧迫感が強くなることがあります。
その状態で装具が当たると、じわじわ痛くなる。
「歩けるけど、気持ちよく歩けない」感覚が残るので、余計に外出が疲れます。
蒸れとかゆみが地味にきつい
装具の中は、想像以上に蒸れます。
特に汗をかきやすい季節は、「蒸れる→かゆい→掻けない→ストレス」のループになりがちでした。
私がたどり着いた結論:退院後の服装は「着脱のしやすさ」が最優先
退院後の服装で何が一番大事かというと、私の結論はこれです。
「装具を付けたままでも、付け直す必要が出ても、破綻しない服装」
つまり、見た目よりも運用性です。
ここからは、私が実際に試して「現実的だった服装」を3パターンに分けて紹介します。
退院後に現実的だった服装3パターン
1)伸縮性がある、ゆったりめのジャージ(短時間向け)
コンビニや近所の用事など、「短時間だけ外に出る」なら、これが一番ラクです。
ジャージなら、装具を服の下に付けても、ある程度は伸びてくれます。
良かった点
- 服の下に装具を隠せるので、見た目の抵抗が少ない
- ちょっとした外出ならこれで完結する
きつかった点
- いざ調整したくなったとき、まくり上げる必要がある
- まくり上げる動作自体が不便(座る場所が必要)
- 外出時間が伸びると、結局ストレスが増える
「一番ラク」だけど「万能ではない」。この位置づけでした。

2)タイトなズボン+装具はズボンの上(現実的で強い)
私が最終的におすすめできるのは、このスタイルです。
タイトなズボンを履いて、装具はズボンの上に装着する。
最初は「目立つ」「恥ずかしい」が勝ちます。
でも、生活の現実としては、このスタイルが一番破綻しにくいです。
良かった点
- 着脱・調整が圧倒的にラク
- 蒸れが軽減される(肌への密閉が減る)
- 周りが気を使ってくれることがある(混雑時など)
私の場合、外に出るだけで不安がある時期だったので、周囲が装具に気づいてくれることが、結果的に安全につながった場面もありました。
きつかった点
- 目立つ(精神的ハードルがある)
- ズボンの上だと、ずれやすい
- ずれやすいので、調整頻度は増える
ただ、調整頻度が増えても「調整しやすい」ので、総合的にはこっちの方がラクでした。
3)ハーフパンツ(またはスカート):最強だが季節と好みが壁になる
装具との相性だけで言えば、膝が露出している服装が最強です。
病院と同じ感覚で過ごせます。
良かった点
- 装具の調整が一瞬
- 蒸れが少ない
- 見えやすいので周囲が気を使いやすい
きつかった点
- 冬は寒い
- 私生活でハーフパンツを履かない人は心理的に選びにくい
- 「装具が丸見え」が恥ずかしい人もいる
理屈では最強。でも、生活に合うかどうかは人による。そんな選択肢でした。
仕事でスーツだった私が詰んだ話
退院後、私が一番苦戦したのは「仕事の服装」でした。
私の場合はスーツが必要でした。
最初の頃は「ズボンの下に装具を付ける」という無茶をしました。
たしかに見た目は隠れますが、現実はしんどいです。
- 締め付けが増えて痛い
- 蒸れてかゆい
- ズボンが引っかかって調整できない
- スーツがすぐに傷む(クタクタになる)
結局、私は途中から割り切って「スーツの上に装具」にしました。
見た目は目立ちます。でも、その方が生活が回りました。
退院後は、“体裁”よりも安全と継続の方が重要です。
ここを割り切れた瞬間、気持ちがかなり楽になりました。
退院後に履く靴は「滑らない」「安定する」が最優先
服装とセットで大事なのが靴です。
退院直後は、膝だけでなく全身のバランスが崩れています。
- 歩幅が狭くなる
- 片側をかばう
- 段差や床の滑りが怖い
- 疲れやすい
この状態で、滑る靴や不安定な靴を履くのはリスクが高いです。
私が意識していたポイントはシンプルで、
- 靴底が滑りにくい
- ぐらつかない
- すぐに脱ぎ履きできる(でも脱げにくい)
この条件を満たす靴が、結局いちばん安心でした。
おしゃれな靴は、回復して膝が安定してからで十分取り戻せます。
退院後の服装は「恥ずかしさ」より「回復の設計」が勝つ
装具が目立つのが恥ずかしい。
それはものすごく分かります。私もそうでした。
でも、退院後の生活は、回復のための期間です。
この期間だけは「どう見えるか」より「どう安全に回すか」を優先した方が、結果的に回復がスムーズになります。
むしろ、装具が見えることで周囲が気を使ってくれる場面もありました。
人混み、狭い道、電車、エレベーター、階段。
そういう場面で、気遣いがあるだけで事故の確率は下がります。
そして何より、自分が「安心して外に出られる」ことが大きいです。
外出が怖くなくなると、生活のストレスが減ります。
ストレスが減ると、回復期を走り切れる確率が上がります。
まとめ:退院後の服装は「運用性」で選ぶのが正解だった
私の結論をまとめます。
- 退院後の服装は、装具のせいで想像以上にストレスになる
- ポイントは「調整・着脱が破綻しないこと」
- タイトなズボン+装具はズボンの上、が現実的で強い
- 靴は滑らない・安定するものを最優先
- おしゃれは回復してから取り戻せる。今は回復を優先した方が楽
「服装なんて些細なこと」と思うかもしれません。
でも、毎日のことだからこそ、地味に効きます。
退院後の生活を少しでも回しやすくするために、服装は本当に重要でした。
同じように装具生活が始まる人の参考になればうれしいです。

