
前十字靭帯を損傷したときに選ぶ2つの治療方法
私が前十字靭帯(ACL)を損傷したとき、最初に突きつけられたのが「治療方法は大きく2つあります」という説明でした。
それが、
- 手術を行わない保存療法
- 膝の中で前十字靭帯を再建する手術療法
の2つです。
どちらを選ぶのが正解、というものはなくて、「自分がこれからどんな生活を送りたいか」や、「膝とどの距離感で付き合っていきたいか」によって変わってくると、後から強く感じました。
この記事では、専門家としてではなく、前十字靭帯と半月板をケガした一人の当事者として、2つの治療方法について私なりの理解と体験をまとめています。
※具体的な治療方針は、必ず主治医と相談して決めてください。ここに書いているのは、あくまで私のケースと受けた説明を整理したものです。
前十字靭帯損傷後に選択する「2つの道」
前十字靭帯を損傷したあとに提示される選択肢は、ざっくり言うとこの2つです。
- 保存療法:手術はせずに、リハビリや筋力トレーニングで膝を支える道
- 手術療法:前十字靭帯を再建する手術をして、その後しっかりリハビリをしていく道
私の場合、最初は仕事のタイミングや生活の事情もあって「とりあえず保存で様子を見よう」と考えました。しかし、半月板損傷を併発していたこともあり、途中から状態が悪化して、最終的には手術を選ぶことになりました。
ここからは、それぞれの治療方法について、私が実際に聞いた説明や、自分で感じたことを分けて書いていきます。
保存療法とは?(手術をしないで膝と付き合う選択)
保存療法は、手術を行わずに、リハビリや筋力強化で膝を安定させていく方法です。
受傷直後の腫れや痛みが落ち着いてくると、だんだんと普通に歩けるようになってきます。そのあとで、
- 太ももの筋力(特に大腿四頭筋・ハムストリング)
- お尻まわりの筋力
などを集中的に鍛えることで、膝の不安定さを筋肉でカバーしていくイメージです。
私が聞いた「保存療法のメリット」
- 手術をしないので、入院や手術の負担がない
- 日常生活レベルであれば、比較的早く「普通に歩ける」ところまで戻りやすい
- 仕事や学校のスケジュールを大きく崩さずに、経過を見ながら進められる
実際に感じたデメリット・不安
- 全力で走ったり、急なストップ・ジャンプをしようとすると「膝崩れ」の怖さがつきまとう
- 何度か膝崩れを繰り返すと、「またガクッといくんじゃないか」という恐怖心が強くなる
- 膝をかばう歩き方が身についてしまい、太ももの筋肉がどんどん落ちていく
日常生活だけを考えるなら、「保存でも何とかなるかもしれない」と感じる場面もありました。ただ、
- バスケットボールのようなピタッと止まる動き
- ジャンプの着地
- 切り返しの多いスポーツ
を、本気で再開したい人にとっては、心のどこかにずっと「不安定さ」が残る選択だと感じました。
手術療法とは?(前十字靭帯を再建して再スタートする選択)
もう一つの選択肢が、前十字靭帯を再建する手術療法です。
私のケースでは、
- まず受傷直後の腫れや痛みを落ち着かせる
- リハビリで膝の可動域と筋力をある程度戻す
- 正座に近いところまで曲がるようになってから手術へ
という流れで進みました。
手術後はすぐに全力で動けるわけではなく、数か月〜1年単位でのリハビリが前提になります。私の場合も、術後7〜8か月くらいかけて、ようやく「本格的な動き」に近づいていくイメージでした。
手術療法のメリット(私が良かったと感じた点)
- 膝崩れや不安定感が、保存のときと比べて大きく減った
- 「全力でジャンプしても大丈夫かもしれない」と思える瞬間が増えた
- 将来的にスポーツ復帰を目指すうえで、選択肢が広がると感じた
覚悟しておいた方がいいデメリット
- 手術そのものの負担(身体的にも、精神的にもそれなりに重い)
- 術後しばらくはかなりの痛みがあり、夜も眠れない日がある
- 一度筋肉がガクッと落ちるので、リハビリで戻すのに時間と根気がいる
- リハビリをサボると可動域が狭くなり、膝の曲がりが悪くなる可能性がある
いいことばかりではなくて、「長いリハビリ」と「痛み」と「時間」は、どうしても避けて通れませんでした。それでも私は、結果的には手術を選んで良かったと思っています。
私が感じた「保存」と「手術」の違い

実際に保存療法を経てから手術に踏み切った身として、ざっくりまとめるとこう感じました。
保存療法のイメージ
- 日常生活は何とかなる(ように感じやすい)
- でも「膝を思い切り信用できない」感覚がずっと残る
- スポーツはセーブしながらなら再開できるかもしれないが、不安はつきまとう
手術療法のイメージ
- 一度どん底まで筋力も生活も落ちる
- そこからコツコツ積み上げていくと、「もう一度、本気で動いてみよう」と思える膝に近づいていく
- 時間も痛みもリハビリもセットで受け入れる覚悟は必要
私の場合は、保存で無理をした結果、半月板をさらに悪化させてしまい、結局手術を2回経験することになりました。
「あのとき最初から手術を選んでいたらどうだったかな」と考えることは、今でもたまにあります。
これから治療方針を考える人へ、私から伝えたいこと
これを読んでいる方の中には、
- 前十字靭帯を受傷したばかりで不安な方
- 保存にするか、手術にするか、まさに迷っている方
もいると思います。
そんな方に、あくまで一人の経験者として伝えたいのは、
「どう生きたいか」から逆算して決める
- 本気でスポーツ復帰を目指したいのか
- 子どもと全力で走り回りたいのか
- 日常生活が普通に送れればいいのか
このあたりを、自分の中で正直に整理してみることが大事だと感じました。
一人で決め込まず、主治医と率直に相談する
ネットの情報だけで判断するのではなく、
- 損傷の程度
- 半月板や他の靭帯の状態
- 年齢や今後の運動量
なども含めて、主治医に率直に聞いてみるのが一番だと思います。
私自身は、遠回りも失敗もしましたが、最終的に手術とリハビリを通して、「もう一度バスケットボールにちゃんと向き合いたい」という気持ちに少しずつ近づくことができました。
この記事が、同じように悩んでいる誰かの「考えを整理する材料」になればうれしいです。
※繰り返しになりますが、ここで書いているのは私個人の体験と感じ方です。治療方針は必ず、あなた自身の状況と主治医の判断をもとに決めてください。

